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生地のお話#3 生地のタテとヨコ

豆知識

WRITER
渡邉直康(代表)
生地に関する豆知識3

衣類、ファブリック、その他、生地はありとあらゆるところに使われています。
人間の生活に欠かせない生地は、空気みたいなものかも知れません。
そんな生地のアレコレを、分かりやすくざっくばらんに解説!
第三話は、生地のタテとヨコについてご説明いたします。
そういうのもあるのか!のミニ情報です。

考えたこと、ありますか?

まずは、こちらの画像をご覧ください。
当店で布団カバーやシーツの材料となっている、綿100%の生地です。

生地のタテとヨコ

いきなりですが、ここで質問です。
生地Aと生地Bは、どちらがタテで、どちらがヨコでしょうか?

そもそも、生地にはタテとヨコがあるのをご存知でしょうか?

洋裁をされる方や、我々のような生地に関わるお仕事をされる方にとっては身近ですが、そうでなければ、生地の向きを考える場面はほぼないと思います。
「生地の向き」という概念すら、ないかも知れませんね。

では正解です。
と言いたいところですが、パッと見ただけで、私には分かりません。
恐らく、分かる人はほぼいないのではないでしょうか。

引っ張ってみる

では、親指と人差し指で生地を挟んで、左右と上下に引っ張ってみます。

まずは生地A。

生地のタテとヨコ

次に生地B。

生地のタテとヨコ

伸び方が違います。
かたくて引っ張り難い方向と、伸びを実感できる方向があります。

伸びる方がヨコです。
伸び難い方がタテです。

生地Aは上下方向が、生地Bは左右方向が伸びました。

正解はこちら。

生地のタテとヨコ

見た目には同じように見えたとしても、AとBは生地の向きが違っていました。

タテとヨコ、織り方の仕組み

昔話の「鶴の恩返し」で、鶴が夜な夜なパタパタと音を立てて生地を仕立てる場面。あれが機織り機(はたおりき)です。
現在の織機も、構造は同じです。

まず、タテに糸を何本も張っておきます。
ギターの弦のようなイメージで、ピンと張っておきます。

ヨコ糸を櫛のようなものに巻いておいて、タテ糸に絡めていきます。

1段目は、ヨコ糸を右から左に。

1本目のタテ糸の下、2本目のタテ糸の上、3本目の下、4本目の上、とジグザグに通します。

互い違いの構造なので、アップルパイのアミのところを想像していただくと分かり易いかもしれません。



1段目が終わったら、糸の隙間を詰めるために木の板をパタパタとします。

2段目は左から右へ。同様に隙間を詰めながら織っていきます。

このような構造から、ピンと張ったタテ方向は生地が伸び難く、糸を絡めて最後に詰めるヨコ方向は伸びる余地があります。

身近な物で試してみよう

お弁当包み、ハンカチ、Yシャツ、パーカー、何でも、身近な布製品を引っ張ってみましょう。
引っ張る際は、親指と人差し指で布を摘まんで、余分な力をかけないでやるのがコツです。

収縮率の要素が関わってくるので、一般的な綿100%のもので試すと確実に分かると思います。

伸び難い方向と、伸びやすい方向があるのがお分かりになりましたか?

試しているうちに、あれこれ引っ張りたくなってしまったりして…笑。

タテとヨコは大切

綺麗な製品を仕上げるには、生地のタテとヨコを把握するのが大切です。

タテとヨコを意識せずに製品を作ると、格好悪くなることがあります。
洋服などは、シルエットが変わってきます。

布団カバーは、出来上がりサイズが大きいので見た目に問題がないように感じます。
しかし、表裏の2枚の方向を合わせておかないと、不都合が生じることがあります。

生地のタテヨコの収縮率に差がある場合があります。
その場合、2枚の方向を合わせておかないと、洗濯後にしわが寄って形が崩れる原因となります。

当店では、設計図をもとにタテヨコを考慮して裁断しています。
場合によっては、目打ちで目印を付けることもあります。
指示書を添付して、間違いのないように縫製フロアに裁断品を運びます。

裁断品

漢字だと経緯

生地の世界では、タテのことを「経」、ヨコのことを「緯」と記載します。
漢字の成り立ちに由来があるようです。

「経」「緯」だと馴染みがないので、個人的には、「縦」「横」で良い気がしますが…。

当店では、製品情報欄に生地の収縮率を記載しています。
例えば、綿100%の布団カバーですと、「タテ-3% ヨコ-3% JIS-L-1096D法」と記載しています。

タテとヨコは、こういったところの数字にも関係しています。


豆知識生地のお話#2

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