生地のお話#1 生地作りの工程
- WRITER
- 渡邉直康(代表)
衣類、ファブリック、その他、生地はありとあらゆるところに使われています。
人間の生活に欠かせない生地は、空気みたいなものかも知れません。
そんな生地のアレコレを、分かりやすくざっくばらんに解説!
第一話は、生地作りの工程を端的にご説明いたします。
ふとした生地の疑問
手芸屋さんに行くと、色々な生地が売ってるよね。
目の粗い感じのもあれば、ツルツルしたのもあるし。
生地の質感って、何で決まるの?
材質によっても変わってくるので、ここでは綿100%を前提にお話ししたいと思います。
あ、そっか。綿以外の素材もあるもんね。
綿100%は基本のキ。
それじゃあ、綿100%で教えてください♪
まず、 ①綿花の質 です。
当然ながら、よいものを作るためには、よい材料が欠かせません。
美味しい料理を作るためには、鮮度のいい食材を使う。
お料理と同じですね。
そうですね。
それから、
②紡績方法とその技術
③織の技術
④下晒の技術
⑤染色技術
といった、製造の技術力も大切な要素です。
!!!
一気に専門的になってきた!
何か、知らない単語ばかりで、む、む、難しい…。
料理に例えてかみ砕いて言うと、調理方法ということです。
いくら鮮度のいい食材を使ったとしても、作り方が悪かったら美味しくなりません。
上手に仕上げるシェフの腕前が大切、ってことですね。
はい、そうです。
当然ながら、製造技術が生地の質にとっては肝になります。
この辺りの技術力は、日本はトップクラスと言われています。
そして、これだけではありません。
⑥糸の太さも仕上がりに関係してきます。
糸の太さか…。何となく分かる気がするよ。
細いと繊細な感じ?太いと厚ぼったい感じ?
そうですね、糸の太さで生地のニュアンスがだいぶ変わってきます。
例えば、当店で扱っている防ダニの東洋紡アルファイン®生地は、超極細繊維で織られています。
見るからにツルツルで、触るとヒヤッとした生地質になっています。
へぇ~。極細だと、ツルツルヒヤッなんだね。
それから、①~⑥がすべて同じだとしても、
⑦織の(糸の)密度
⑧織り方の違い(例、ブロード、サテン、ツイル)
も、生地質に影響する要素です。
⑦と⑧は、同じとも言えますが。
また、⑨染色後の生地仕上げ(例、カレンダー加工)
によっても変わります。
まだあると思いますが、主に生地質に関係してくる要素は⑥~⑨になります。
!!!
ややこしい…む、む、難しい…。
ちょっとずつ解説お願いします!
ちょっとずつですよ!
錦糸選別
まず初めに、「①綿花の質」に関係する、錦糸選別についてお話します。
綿花から採れた糸を「綿糸」と言います。
綿糸とは、鼻毛のような感じのものです。
例えが悪かったかな…汗。
綿糸を長さで選別する作業があります。
大中小みたいな感じ?
はい、そうです。
・短いもの
・ちょっと長いもの = コーマ
・規定以上に長いもの = 超長綿
となり、どれを使うかで生地質に違いが出ます。
一般的に、長い方が上等でしっとりしなやかな高級感のある仕上がりになります。
綿糸の長さで生地の仕上がりが変わるなんて、知らなかった。
豚こまかしゃぶしゃぶ屋のべろ~んって長い肉か、みたいな感じかしら。
うちは豚こま専門だけど。
ま、まぁ、そんな感じです…汗。
あのぉ…。
鼻毛、じゃなかった、綿糸の選別って、人がちまちまと1本ずつピンセットで分けてるんでしょうか?
そんなこと、あるわけないでしょう笑。
専用の選別機で選別します。
そりゃそうだよね…汗。
世の中には、すごい機械があるもんだな~。
生地を作る工程
気を取り直して。ちょっといいですか?
気を取り直してくれて良かったです。
はい、どうぞ。
錦糸を選別した後。
肝となる生地の製造なんだけど、さっきの話からすると、製造工程は、
紡績 → 織 → 下晒 → 染色
ってことみたいだけど、合ってる?
はい、合っています。
最後の二つの「下晒」と「染色」をまとめて「染工」と言うので、
紡績 → 織 → 染工
としても良いです。
紡績
製造工程の一番最初、紡績って”ぼうせき”って読むんだよね。これは何?
はい、”ぼうせき”と読みます。
短い繊維から糸を作ることです。
あ!そっか!
ちまちました鼻毛…じゃなかった…汗、綿糸を繋げて長い糸にするんだね!
その通り!
大事な糸作り、それが紡績です。
紡績とは、撚(よ)り合わせて引き伸ばすという意味です。
物作り大国の日本には、優秀な紡績会社がいくつもあるんですよ。
緻密で技術力の高い日本の紡績会社は、世界トップクラス水準と言っても過言ではありません。
当店では、信頼のおける国内紡績会社の商品を取り扱いさせていただいております。
へぇ~。日本の紡績会社ってすごいんだね。
織
「紡績」の次は「織」だね。これはイメージわくぞ!
鶴の恩返しで、鶴がこっそりギッタンバッタンやってるやつだよね?
確か、鶴が自分の羽を使ったんじゃなかったけ?
自分の羽使ってましたっけ?
構造は、つるの恩返しのはた織りと同じです。
それの超でかい機械です。
ちょっと前までは、バタバタバタとすごい音のする機械でしたが、今はウィーンという電子音のような音で、静かに早く織れるようです。
へぇ~。織機も進歩しているんだね。
下晒
それで、織ったら次は「下晒」。何て読むの?
”したさらし”と読みます。
下晒は、織った生地を洗って漂白することです。
えっ!洗って漂白してるの??
あれ?生地って、もともと何色なの?
もともとは、綿花の白です。
でも、汚れがついているので真っ白ではありません。
生成りという色がわかるでしょうか?アイボリーのような色です。
アイボリー、分かるよ!
そっか、アイボリーのような色がついていたら、染色で思い通りの色にならないんだね!
だから漂白するんだね!
その通りです。
綿花にもともと色が付いているとは、まさしく盲点!
漂白作業なんて、思いもしなかったよ。
綿花って聞くと、てっきり真っ白なものだと思ってた。
だって、綿花なんてその辺で売ってないし、実際に見たことないし。
綿花を栽培している畑があったら見てみたいな。
日本では、滅多にお目にかかれなくなりました。
ですが、まれに一部の場所で作付けが行われているようですよ。
インド、アメリカ、中国をはじめ、ネットで探すと大規模栽培が行われている海外の綿畑の写真が見つかると思います。
染色
「下晒」の次、「染色」!
染色は分かる、分かる!
色んな色に生地を染めるんだよね?
藍染めとか草木染とか、あの感じだよね。
単色の無地の場合は、あんな感じです。
例えば、ブルーのみ、イエローのみ、とか。
でも当然、手作業でやる樽染めみたいなものではなく、大きな機械に通して染めます。
へぇ~。
染める機械があるんだ。
どのくらい大きいの?
小さい窯から大きいものまで様々です。
大きいものだと、10トントラックくらいのサイズもあります。
!!!
引っ越し以上だわ!
すごすぎる!
素朴な疑問なんだけど、そんな大きな機械が色ごとに用意されているわけないよね?
例えば、赤で染めたとするでしょ、その次黄色を染めたいと思ったら、機械の中をいちいち全部洗うの?
色が混ざったりしないの?
はい、当然洗わないと次の色を染められません。綺麗に洗浄します。
洗浄技術も、長けているんだね。
そうですね。
単色ではなく柄物=プリントの場合は、やり方が違います。
プリント生地は、版画のような染め方をします。
小学校の図工で、版画をやったことありますか?
やったことあるよ!
ダンボールでパーツ作って、ローラーで色付けて、順番にペタペタやった!
それそれ。
版画と同じで、1色ごとに版を作って、5色なら5枚の版を順番に押して柄を作ります。
ふぅ~ん。版を重ねるんだ。
何色もあったりすると、緻密な作業だね。
どの色から順に版を押したらいいか考えるのも、頭を使いそう。
版を作るのも大変そうだし、ちょっとでも色がずれたら柄が台無しになっちゃうから、技術が要りそうだね。
そうですね。
専門の型屋さんがいます。きっちり作ってくれて、まさしく匠の技!
ちなみに、当店でこれまでで一番型屋さんが苦労したプリント生地はこちら。
もう生産終了してしまいましたが、きれいなグラデーションが緻密に施されたプリント生地でした。
型屋さんも染色屋さんも、渾身の生地だったんですよ。
おわりに
わぁ…生地の質って何が決め手なのか聞いただけだったんだけど…。
その話を聞く前に、色々勉強になっちゃった。
「生地質って何に左右されるか」って話でしたよね。
本題に入る前に、話がだいぶ長くなってしまいました。
続きは、次回にしましょう!
続きが楽しみでーす♪ありがとうございました♪
豆知識生地のお話#2
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